2009年6月11日木曜日

レビューサンタフェ2 Portfolio Review

6月5日

さて、あけて5日、10時から3時までいよいよポートフォリオレビューの開始である。

ポートフォリオレビューの始まりはおそらくヒューストンのミーティングプレースからだろうと思う。ヒューストンフォトフェストは1983年から始まっている。それが今では欧米のあちこちでさかんにポートフォリオレビューが行われるようになった。
これは写真がアート業界に組み入れられて一枚のオリジナルプリントの価値もここ10年くらいの間に急激にあがってきたこととも無縁ではないのだろう。

写真のエキスパートと呼ばれるギャラリストやキューレーター、出版社や編集者、コンサルタントなどといった人たちがレビュアーとなって参加したフォトグラファーのポートフォリオを20分間見てくれたり、アドバイスをしてくれたりする、というのが基本的なレビューの姿である。

日本ではフォトグラファーからの持ち込みでポートフォリオを見てもらうのが普通なのだが、欧米では簡単に持ち込みはできない。ギャラリーに電話すれば今忙しいから3ヶ月後にまた連絡してくれないか、というやんわりとしたお断りがあったり(もちろん3ヶ月後に電話しても同じ言葉が返ってくるだけ)、サイトにはっきりと持ち込みはできません、と書いてあったりする。

そうした事情からポートフォリオレビューは唯一フォトグラファーがギャラリーなどに直接プレゼンテーションできる貴重な機会なのだ。

レビューサンタフェでは43名のレビュアーから9人を選んで見てもらうことができる。ただ、どのレビュアーが自分に向いているかということは少ない資料やそのギャラリーなどのサイトを調べることでしか手がかりがない。

特に日本から参加する場合はよけいにわかりにくい。そんなわけでレビュアーの下調べは時間もかかるし一番大変な部分である。

僕が一番最初に見てもらったのはJane Brownさん。D.A.P.Westという出版社のディレクターだ。ジョン・シャーカフスキーのLooking at Photographをはじめウイリアム・エグルストン、トマス・ルフ、ナン・ゴールディン、アレック・ソスなどといった古典から現代作家までそうそうたる顔ぶれの写真集を出している。

最初というのは緊張するものだが、ここでアメリカの写真市場の大きな壁にぶつかってしまった。つまり、アメリカのファインアートの市場では基本的にストレートで社会性のある写真が評価されるということだ。
アメリカは写真の国だ。アンセル・アダムス、エドワード・ウエストンを始祖とし、リー・フリードランダー、ロバート・フランク、リチャード・アベドン、
ウイリアム・エグルストン、リチャード・ミズラック、ジョエル・マイエロヴィッツ、ロバート・メイプルソープに至るまでフォーマットは様々あるにしても写真をストレートに使って表現をしてきた。
デジタル化が進んだ今もフォトショップであれこれいじるのはアマチャアのお遊びと見られていてファインアートの世界ではあくまでストレートな写真の王道がよしとされている。
レビュアーのコメントにもコマーシャルフォト、ストックフォト、ヌード、フォトショップでいじりすぎている写真は見たくない、とコメントしている人が多くいる。

今回僕が持って行ったポートフォリオのひとつ、福福星はクラブピープルのポートレートでセットアップした写真ではなくクラブイベントにきた人をその場で撮影したドキュメントである。フォトショップの後処理でフォーカスをかけて発光したような効果をつけているのは、彼らがドレスアップしてこう見えたいという形をより効果的に、鏡に映したように表現したかったからに他ならないのだが、なんでこういう後処理をするのか、ということが問題になるのだ。

ここはきびしく攻めこまれる。こちらにも相当の確信と主張がないと対抗できない。
もちろん僕のほうも3年くらいの撮影期間とその間に仕上がりも何度も悩みながら作り上げてきただけに確信はあるのだが、めんと向かってうまく主張することは結構難しいものだ。

今回のレビューサンタフェで感じたのはたいていのレビュアーの価値観の中にストレートフォトを信奉している確信というものを強く感じた。
ただ日本のようにみんながあっちを向けばみんなその価値観になっていく、というような傾向は全くない。個人の好みがはっきりしているだけで、有名であろうがなかろうが好きなものは好き、興味のあるものにはすごく関心を示し、興味のないものは全く関心なし、ということははっきりしている。

そんなわけで、次にみてもらったオンラインマガジンの共同創立者David Bramさんには、あなたの写真は僕の好みとは違うんだけどすごく興味がある、というコメントをいただいた。彼のことは別の項目で紹介したい。

この日の最後は「The Photograph As Contemporary Art」やギイ・ブルダンの写真集に解説を書いていて現在LA County Museum of ArtのキューレーターをしているCharlotte Cottonさんにみていただいた。
彼女は非常に穏やかな人で写真の技術的な問題にたいするこだわりもなく淡々と感想とアドバイスをしてくれた。
後藤繁雄さん、横浜美術館の天野太郎さんなどの名前も飛び出して和やかな雰囲気になった。「The Photograph As Contemporary Art」は今年の9月には日本語訳もでるそうだ。

ポートフォリオレビューが行われている間もフォトグラファー同士は休憩室に集まったり、廊下などいたる所でお互いの作品を見せ合っていた。

これがものすごくおもしろい。参加するフォトグラファーの作品はレビューサンタフェのサイトにアップされているので事前に見ることが出来るのだが、やはり本物のポートフォリオは様々なバリエーションがあってしかもレベルも高くとにかく見ていて飽きない。



フォトショップの発達で横長、縦長の写真も多く見受けられる。

レビューに参加した写真家同士でポートフォリオをみせあう。その人の考え方や手法を知るいい機会だ。
高校生のプロムカップルのポートフォリオを説明している。キャノンのマーク2で撮影してインクジェット出力ということだが、非常にクオリティが高くて大型カメラで撮影したような印象を受けた。

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